外科矯正
外科矯正の対象者とは

口唇口蓋裂、顎変形症の症状をお持ちの方が外科矯正の対象となります。
外科矯正の流れ
- 手術前矯正手術時に上の歯と下の歯が安定するように歯科矯正をします。
- 外科初診手術約1か月前までに、外科初診を受けていただきます。そこの問診にて外科手術に対し問題がないかどうかを診断してもらう。
- 臨床検査同時に臨床検査を行います。
- 結果の説明約2週間後結果の説明を聞きます。全身麻酔の前準備をします。
- 入院手術前日位に入院をします。
- 手術手術になります。3~6時間程度かかります。
- 流動食への移行状態が良ければ翌日か翌々日から流動食になります。
- 退院1~2週間後に退院となります。
- 手術後矯正上下の顎の関係が正しい位置になったところで、個々の歯の関係をよりよくするため歯科矯正をします。新たな顎の位置の筋肉を順応させる目的もあります。
外科矯正の治療期間
術前矯正1~2年、手術、術後矯正1~1.5年です。その後保定となります。
外科矯正は
健康保険が適応されます

矯正治療は、保険適応外(自費治療)ですが、外科矯正治療は保険が適応されます。
但し、保険が効く外科矯正治療を行うことができる医療機関である指定を受けている必要があります。
自立支援(育成・厚生)医療機関とは
以下の設備、ドクター(症例経験など)、体制の条件をクリアし、厚生労働省、ならびに、千葉県より指定を受けた医療機関です。
施設基準 | ・セファログラム・レントゲン ・下顎運動検査機器 ・咀嚼筋、筋電図検査機器 |
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臨床基準 | 5年以上の矯正臨床経験および口唇口蓋裂の治療経験(5症例)のある歯科医師が常勤していること。 |
保険適応の矯正治療ができる
医療機関
自立支援(育成・厚生)医療機関では、矯正治療に保険を適応することができます。上顎や下顎を手術しなければ、噛み合わせを治すことのできない状態を顎変形症といいます。
顎変形症の方は、健康保険による治療を受けることができます。費用は、ケースバイケースですが、治療開始から治療終了までの矯正治療費の総額は、20〜40万円です。※手術および入院の費用は別途必要です
外科矯正の費用
3割負担で歯科矯正が20~30万円、外科手術入院を含めて40万円前後です。歯科矯正は毎回支払います。
外科は手術の際に払いますので、一度に大きな金額を支払うことになります。
外科矯正の失敗例
外科矯正は骨の位置を大きく変えるため、その位置に上下顎骨を取り巻く筋肉に大きな変化が生まれます。この変化に順応できない場合後戻りを生じます。もちろん、変化した筋肉のトレーニングが必要になります。
骨は手術によって正しい位置にくっついていますが、歯は動きます。筋肉の働きにより歯に力がかかった場合歯は悪い方向に動きます。これが後戻りにつながり、悪くなります。
外科矯正のリスク
外科手術におけるリスクとしては、特に下顎神経へのリスクが考えられます。この手術の方法として、下顎神経への多少のダメージが考えられます。その結果下顔面のマヒを生じることがあります。
しかしそのような場合も、徐々に範囲が狭くなってきます。
顎変形症とは?

顎変形症とは、上下顎の位置がずれていてその改善に歯科矯正及び外科手術が必要な症例を顎変形症と呼びます。
顎変形症の症状について
1.反対咬合(受け口)
下顎が上顎より前方に出る、あるいは上顎が下顎より後方に引っ込むことによる骨格性の反対咬合です。
術前

術後

主訴 | 受け口 |
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診断 | アングルⅢ級反対咬合 |
初診時年齢 | 25歳4か月 |
装置 | マルチブラケット |
抜歯・非抜歯 | 非抜歯 |
手術 | 上下顎骨切り |
治療期間 | 2年 |
通院回数 | 29回 |
治療費 | 矯正治療費約23万、手術治療費約33万 公的医療保険の適用のため保険診療となります |
矯正歯科リスク | ・歯の移動による痛み ・装置が粘膜に当たることによる口内炎 ・ブラッシング不良による虫歯、歯肉炎 |
手術のリスク | 1次的な皮膚のマヒがみられる場合があります |
2.上顎前突(出っ歯)
上顎が下顎より前方に出る、あるいは下顎が上顎より後方に引っ込むことによる、骨格性上顎前突です。
術前

術後

主訴 | 出っ歯 |
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診断 | アングルⅡ級1類上顎前突 |
初診時年齢 | 22歳8か月 |
装置 | マルチブラケット |
抜歯・非抜歯 | 上顎左右第1小臼歯抜歯 |
手術 | 上下骨切り |
治療期間 | 3年 |
通院回数 | 38回 |
治療費 | 矯正治療費約23万、手術治療費約35万 公的医療保険の適用のため保険診療となります |
矯正歯科リスク | ・歯の移動による痛み ・装置が粘膜に当たることによる口内炎 ・ブラッシング不良による虫歯、歯肉炎 |
手術のリスク | 1次的な皮膚のマヒがみられる場合があります |
3.開咬
奥歯のみの咬合によりその前方が接触していないため前歯で食べ物が噛めない状態です。
術前

術後

主訴 | 歯が噛み合わない |
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診断 | アングルⅠ級、開咬 |
初診時年齢 | 16歳9か月 |
装置 | マルチブラケット |
抜歯・非抜歯 | 非抜歯 |
手術 | 上顎骨切り |
治療期間 | 3年 |
通院回数 | 39回 |
治療費 | 矯正治療費約23万、手術治療費約30万 公的医療保険の適用のため保険診療となります |
矯正歯科リスク | ・歯の移動による痛み ・装置が粘膜に当たることによる口内炎 ・ブラッシング不良による虫歯、歯肉炎 |
手術のリスク | 1次的な皮膚のマヒがみられる場合があります |
4.交叉咬合
上顎または下顎が左右のずれているため、左右どちらかのみで噛むような状態で顔貌が歪んで見えることが多いです。
術前

術後

主訴 | 顔が曲がり食べにくい |
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診断 | アングルⅢ級、非対称 |
初診時年齢 | 22歳 |
装置 | マルチブラケット |
抜歯・非抜歯 | 非抜歯 |
手術 | 上下骨切り |
治療期間 | 3年 |
通院回数 | 40回 |
治療費 | 矯正治療費約23万、手術治療費約35万 公的医療保険の適用のため保険診療となります |
矯正歯科リスク | ・歯の移動による痛み ・装置が粘膜に当たることによる口内炎 ・ブラッシング不良による虫歯、歯肉炎 |
手術のリスク | 1次的な皮膚のマヒがみられる場合があります |
顎変形症になる原因

反対咬合や上顎前突は遺伝的な要因が多いと考えられます。程度の差はあります。
開咬や交叉咬合は、小児期の咬合や舌の使い方の悪さが影響します。
顎変形症が引き起こす弊害
- 噛み合わせが悪くよく噛むことができず、食事に時間がかかったり逆に丸呑みにしてしまったりします
- 一部の歯に大きな力がかかることがあり、虫歯や歯周病になりやすいです
- 舌の使い方が悪く、発音に影響することがあります
- 顔貌に影響が出る場合、精神的に劣等感を抱き引っ込み思案になることもあります
顎変形症の検査・診断
- 写真:顔貌&口腔内
- レントゲン:歯のレントゲン&横顔のレントゲン&正面のレントゲン
- 口腔模型
- 顎の動き
- 顎の筋肉の楽な位置
などの検査を行い、これに基づき上下顎それぞれの歯との関係からどのように歯を並べるかを検討します。
また顎の位置は頭の位置に対しどこに持っていくことが良いか検討します。それらにより、治療計画を立て実行してゆきます。
顎変形症を治す方法
手術をした際に固定される顎の位置で上下の歯が噛めるように、歯科矯正治療を始めます。
手術後上下の歯が噛み合う状態になったところで、手術を行います。手術後、細かい歯の調整を行い、保定に移ります。
顎変形症治療後の再発
舌の影響が大きいと考えられます。骨は手術により正しい位置にしっかりとくっついているため後戻りはしません。
しかし、歯は動きます。初診時と同じ動きを舌がしていると、歯をもとの位置に押してしまいます。
少し歯が動きますと、噛み合わせは大きく変わってしまいます。元の噛み合わせに歯が動いていくということです。
唇顎口蓋裂とは

胎生時に上顎は左右から上顎の突起が成長してきます。その結果、左右の突起が接触し閉鎖されてきます。
この、左右の突起の接触が生じず閉鎖しない状態です。これは鼻と口が隔離されずつながっている状態です。
唇顎口蓋裂の症状について
鼻と口がつながっているため、お乳がうまく飲めず鼻からあふれてきます。その際呼吸も難しくなり、呼吸困難に陥る場合もあります。
また、お話ができる時期になると、声が鼻から漏れてしまいます。
唇顎口蓋裂が引き起こす弊害
- 摂食障害
- 発音障害
- 上顎成長障害による不正咬合
唇顎口蓋裂の検査・診断
歯科矯正において行う検査は、顔貌&口腔内の写真撮影、歯のレントゲン&横顔のレントゲン&正面のレントゲン、口腔模型です。
唇顎口蓋裂を治す方法
これは、生後から18歳くらいまでかかる治療になります。
- お乳を飲みやすくする生後より、口と鼻を分けお乳を飲みやすくするため装置を用いて行います。
- 唇裂の閉鎖生後半年くらいで唇裂の閉鎖を行います。
- 口蓋閉鎖手術発音が始まる1歳半くらいで口蓋閉鎖手術を行います。これにより発音をしやすくします。この手術により、上顎の成長に影響が出る場合があります。その場合、早期からの矯正治療が必要となります。
- 上顎の拡大まず上顎の拡大が必要になります。これにより歯が生える場所の骨に隙間が大きくなった場合その部分に骨移植を行いその場所に歯が出やすい状態を作ります。永久歯の萌出を待ちます。
- 歯並びの治療萌出後矯正装置を用い歯並びの治療を行います。
- 口唇や鼻の修正手術18歳位で(成長が終わりに近いところ)口唇や鼻の修正手術を行います。
術前

術後

主訴 | 受け口、歯がガタガタ |
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診断 | アングルⅠ級、反対咬合、左側唇顎口蓋裂 |
初診時年齢 | 16歳8か月 |
装置 | 拡大床、マルチブラケット |
抜歯非抜歯 | 右上第2小臼歯、下顎左右第1小臼歯抜歯 |
治療期間 | 3年4か月 |
通院回数 | 37回 |
治療費 | 矯正治療費約24万 公的医療保険の適用のため保険診療となります |
矯正歯科リスク | ・歯の移動による痛み ・装置が粘膜に当たることによる口内炎 ・ブラッシング不良による虫歯、歯肉炎 |
唇顎口蓋裂治療後の再発
1次手術(口蓋閉鎖手術)の状態が後の矯正治療に影響します。
特に、矯正初診時において上顎が狭くなっている場合、矯正では上顎の拡大が必要なためその拡大の後戻りが多くみられます。それにより、歯並びが大きく変化します。